1人で考えるのを、やめた|56歳、AI3者と会議を始めた

50代からのAIプログラミング

「次長、その計画、現場は回りませんよ」

水曜の午後3時。会議室の空気がキリキリと音を立て、緊張していく。発言したのは、現場一筋のベテランだった。私が一週間かけて練った企画書が、机の上で立ち往生する。

正直に書くと、あの頃、会議が嫌いだった。

意見は割れる。話は脱線する。決まりかけたものが、ひっくり返る。「1人で決めさせてくれたら、半分の時間で済むのに」——何度、そう思ったか分からない。

会社を辞めて、その願いは叶った。

会議は、消えた。反対意見も、消えた。全部、1人で決められるようになった。

天国だと思った。最初の数か月は。

誰も「それは違う」と言ってくれない

独立して、しばらく経った頃。妙なことに気づいた。

仕事は、進む。決断は、速い。誰の承認もいらない。

なのに、ふと「本当に大丈夫か?」と思う事がある。

自分の考えが正しいのか、確かめる方法がないのだ。

会社員の頃は、企画を出せば、誰かが穴を突いてくれた。「現場は回りませんよ」のベテランがいた。数字の矛盾を見つける経理がいた。黙って腕を組む上司がいた。

鬱陶しかった、あの全部が、思考の壁だった。ボールを投げれば、跳ね返ってくる壁。

独立すると、壁がない。投げたボールは、どこまでも転がっていって、戻ってこない。

一人で考える事の限界は、意外とあっさりやってきた。どんどん手応えが無くなっていくのが判った。気づいたときには、自分の考えに自分で頷くだけの毎日になっていた。

AIに聞いても、壁にならなかった

「AIがあるじゃないか」と思うかもしれない。

私も、そう思っていた。実際、毎日AIに聞いていた。

でも、何かが違った。

AIは、丁寧に答えてくれる。整理もしてくれる。けれど、基本的に、こちらの考えに寄り添ってくる。私の前提ごと「それは違う」とひっくり返しには、来ない。

壁打ちのつもりが、壁が柔らかすぎて、ボールが止まる。

1人と、1人に寄り添うAI。それは結局、裸の王様だった。

会議室には、あったのだ。立場の違う人間が、別々の角度から、同じ計画を突いてくる。あの不快で、ありがたい衝突が。

あれを、取り戻せないか。

同じ構想を、3者に投げてみた

ある夜、思いつきで、やってみたことがある。

練っていた構想を、ChatGPT、Claude、Geminiの3者に、同じように投げた。それぞれに専門家の役を付けて、「忖度なしの辛口で頼む」と添えて。

返ってきた3つの答えは、見事にバラバラだった。

1者は構造の甘さを突き、1者は市場の前提を疑い、1者は私が考えてもいなかった角度から代案を出してきた。

面白くなって、次の一手を打った。

それぞれの答えを、他の2者に見せたのだ。「他のAIはこう言っている。あなたはどう思う?」と。

画面の中で、何かが始まった。

反論が出た。反論への反論が出た。「その指摘は的を射ているが、見落としがある」と、1者が別の1者を正面から突いた。

手が、止まった。

これは、会議だ。

水曜午後3時の、あの空気だった。意見が割れて、ぶつかって、私の構想が机の上で揉まれている。あの、鬱陶しくて、ありがたい時間が、深夜の画面の中に戻ってきていた。

2周、3周と回すと、景色が変わる

この「会談」を、2周、3周と回す。

すると、不思議なことが起きる。3者の意見が衝突した場所から、私の頭の中に、新しい構想が立ち上がってくるのだ。

どの1者が言ったことでもない。衝突の火花の中から、「これだ」が生まれる。

会社員時代の良い会議が、まさにそうだった。誰か1人の意見が通るのではなく、ぶつかり合いの中から、誰のものでもない正解が浮かび上がる。あれと同じことが、AI3者で起きる。

1人で考えるのを、やめた。

正確に言えば、「1人きりで考える」のをやめて、「3者と会議して考える」に変えた。

独立して失ったはずの会議室を、私は月数千円で、取り戻したことになる。しかも今度の会議は、深夜2時でも文句を言わずに集まってくれる。

会議が鬱陶しい、あなたへ

もし、いま会社員で、会議にうんざりしているなら、1つだけ伝えたい。

会議の鬱陶しさには、2種類ある。

1つは、議事録のような「作業」の鬱陶しさ。これはもう、AIに任せてしまえばいい。実は、そのための議事録要約アプリも作った。記録は機械に任せて、人は議論に集中する。そういう時代だ。

もう1つが、あなたの考えを跳ね返してくる「壁」の鬱陶しさ。こちらは、作業とは違う。外に出ると、それが消える。消えてはじめて、あれが財産だったと分かる。

そして、もう1つ。

その壁は、いま、AIで作れる時代になった。1人に寄り添う1者のAIではなく、立場の違う3者を、会議室に座らせることで。

会社にいながらでも、できる。週末の構想練りに、3者の会議を試してみればいい。やり方は、難しくない。

具体的な回し方は、水曜のNOTEで

「で、どう回すのか」。

誰に何をどう渡すのか。意見をどの順番でぶつけるのか。何周で止めるのか。最後にどう収束させて、どう1者をパートナーに選ぶのか。

その全手順を、6月10日(水)20:00公開のNOTE第3話「3者のAIを『組織』のように動かす」に書いた。連載で初めての有料記事(200円)になる。

無料の第1話・第2話で、「使う」と「活かす」の違い、問いの投げ方までを書いてきた。第3話は、その実践の核になる。コーヒー1杯より安い値段にしたので、3者会議に興味が湧いた人は、覗いてみてほしい。

▼連載はこちらから(第1話・第2話は無料)
「使う」じゃなく「活かす」|独立10ヶ月のAI実践記録

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